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こんにちは。 このブログでは、私が書いた二次小説をアップしていきたいと思います。 誹謗中傷、勝手なお持ち帰りは厳禁です。 コメント、拍手、リクエスト、リンクの依頼、挿絵の提供は大歓迎です。 「ご案内」から行くとわかりやすいかもしれません。
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こんばんは。
あ、日本だとこんにちは、になるのかな?

先週からいよいよアメリカ留学が始まった瑠璃です。
ブログの更新にはなんの問題もなさそうなので、
これからも気が向いたらちょいちょい更新したいと思います。

そんなアメリカ一発目のSSは、狼陛下の花嫁SSです。
ともこ様リクエストにお応えした(できてるかな?)お話を書きたいと思います。

ともこ様のみお持ち帰りOKです。
他の方は申し訳ないのですが、ご遠慮ください。

それではどうぞ。

拍手[42回]


【世界中の誰よりきっと】

「10…20…30…」
真剣な顔で勘定をしている李順を、
夕鈴もまた真剣な表情で見つめていた。

「よし。これで借金は完済ですね。
お疲れさまでした、夕鈴どの」
「やったー!」
待ちに待ったその言葉に、夕鈴は両手を挙げて叫んだ。
ついに借金から解放される日がやってきたのだ。
その様子を見ている黎翔も嬉しそうだ。

「さて、借金も返し終わりましたが、
どうしますか、夕鈴どの?」
「どうするって?」
夕鈴と黎翔の声が重なった。
二人ともきょとんとしている。
李順は軽く息をついていった。
「これからのことですよ。
このバイトを続けるのか、それとも…」
「もちろん続けるよね、夕鈴!」
黎翔が間髪いれずに言う。
彼の背後で、あるはずのない尻尾がパタパタしていた。
しかし、夕鈴の返事はあっけにとられるものだった。

「いえ、私、もうこのバイトはやめます」

「え?」
今度は李順と黎翔の声が重なった。
李順もさすがにこの展開は予想していなかったらしい。
一方の黎翔は…
「待って、夕鈴。
やめるってどういうこと?」
あたふたと夕鈴に駆け寄るも、
夕鈴はただ微笑むだけ。

「ち、ちょっとあっちで話そう!」
有無を言わさず、夕鈴の手をつかんで、
外へと飛び出した。

「夕鈴、一体どうしたの、バイト辞めるなんて」
庭先で彼女を問い詰める。
夕鈴は気まずそうに黎翔から顔をそむけた。

「…いつかは本当に夕鈴を正妃に迎えたいのに…」
その言葉に夕鈴はピクリと肩を震わせる。
そしてくるりと振り向き、笑顔で言った。
「それはいけませんよ、陛下。
あなたに似合うのは、私なんかよりずっと女の子らしい人です。
ここでバイトをして、気付いたことがあるんです。
でも、気付いたからこそ、私、あなたの傍にいちゃいけないなって思って…。
だから、私、バイトを辞めるんです」
「夕鈴…?」
黎翔がそっと伸ばした手を、夕鈴はふわりと優雅によける。
「わかんないよ、君が気付いたことって何?」
夕鈴は一瞬躊躇いを見せたが、やがて口を開いた。

「私、あなたのことが好きなんです」

「え?」
思いがけない告白に、黎翔は目を見張った。
――好きって。夕鈴が僕を好きって…
「で、でも夕鈴、もし今の言葉が本当なら、
バイトつづけたっていいじゃない。
僕のそばにずっといてくれたっていいじゃない」
「駄目です!」
夕鈴は力強く叫んだ。
「私なんか、あなたの重荷にしかなりません。
わかってください、陛下。
私、あなたに迷惑をかけたくないんです。
好きだから…。
だから、バイトを辞めて実家に帰ることにしたんです」
そして夕鈴はふわりと一礼した。
彼女の眼に一瞬、光るものが見えた気がしたのは気のせいだろうか。
「さようなら、陛下。
今まで、本当に本当にありがとうございました」
「夕鈴!」
そう叫んでも、その声はむなしく響くだけだった。

それから一カ月。

「姉さん、どうしたの? 手が止まってるよ?」
料理の手伝いをしていた青慎が心配そうに夕鈴の顔を覗き込む。
「あ、ごめんね。なんでもないの。
ごめんね、ぼーっとして…」
「別に大丈夫だけど…。
なにかあったの、バイトもいきなり辞めて帰ってきちゃうし…
李翔さんとなにかあった?」
「な、ないわよ! そんなの! 
これっぽっちも! ええ!」
夕鈴がそう叫ぶと、玄関から、ごめんくださいという声が聞こえた。
「誰かしら? 青慎、ちょっと見てきてくれる?」
「うん」

弟がいなくなった台所で考える。
陛下のことは好き。大好き。
でも、だからこそ私はあの人の傍にはいられない。
だって、女に溺れて国政が疎かになるなんてことを言われたくない。
あんな小娘、陛下に似合わないなんて言われたくない。
「正妃になって」と言われたのは嬉しかったけれど、
これ以上、あの人に迷惑をかけられない。
大切だから。大好きだから。
だから離れようと決めたの。

「姉さん! 姉さんてば!」
大慌てで自分を呼ぶ声にはっとして戸口を見ると。
「ごめん、どうしても姉さんに会いたいっていうから…」

「久しぶりだね、夕鈴」

「…っ、な、なんで来たんですかー!?」
そこには黎翔が立っていた。

青慎を外に出し、ふたりきりになった居間で、
夕鈴はしきりに目線を彷徨わせていた。

「うん、あのね、やっぱり君に、王宮に戻ってきてもらいたくて」
「な! 戻りませんよ! 絶対に戻りませんからね!」
「どうして?」
「…っ。言ったじゃないですか。私はあなたに釣り合わないって」
「でもその前に、僕を好きだって言ってくれたよね。
僕が君を好きで、君も僕を好きなら、なんの問題もないんじゃないの?」
「だから! 私なんかがあなたみたいな人を好きだって言っても、
あなたの迷惑にしかならないから…!
それに、もうそのことは忘れてください」

「忘れられないよ」
「え?」
「ずっと好きだった子からの言葉だもん。
忘れられない」
口調は子犬だったが、目は狼だった。

「君は、僕を好きになっても、
それは僕の迷惑にしかならないって言ってたけど、
別に何も迷惑しないよ?」
「何言ってるんですか!
立場とか、身分とか、いろいろあるじゃないですか!」
「そんなもの、私は気にしない!」
いつになく強い狼陛下の声が響いたかと思うと、
次の瞬間、彼の腕の中に閉じ込められていた。

「立場がどうのとか、
女に溺れたとかぬかすやつはただのバカだ。
そんなやつに、君を傷つけられたくない」
「…っ、だから、私はっ!」
必死になってもがこうとするが、きつく抱きしめられているので
抵抗することすらかなわない。

「それに、君のいない王宮は、すごく、さみしい。
君がいた時のことがまるで夢のようで…。
もしかしたら、私は世界中のだれよりも幸せな夢を見ていただけかもと。
そう思ってしまった。
だから、夢で終わらせたくない。
君に王宮に来てほしい。
いつ終わるともしれないバイトの身としてではなく、
ずっと私の傍にいる正妃として。
頼む、私と一緒に戻ると言ってくれ。
私には君が必要だ。
君がいないと、今にも死にそうだ」
余りにも切実な声に、夕鈴は胸が締め付けられる思いがした。
そして、気がつけば、黎翔に縋りつくように抱きついていた。

「…私、でいいんですか?
どこにでもいる女の子で、
何の後ろ盾もない、そんな私でいいんですか?」
「さっきから何度も言っている。同じことを言わせるな」
「私、も…」
「うん」
「ずっと、陛下のことを考えていました。
何してるのかなとか、ちゃんとお仕事してるのかな、とか…」
「…うん」
「でも、いいんですね? 私、あなたの傍にいていいんですね?」
「ああ、もちろんだ」

――これからは二人で生きていこう
涙に濡れた夕鈴の瞼にそっと口づけながら黎翔は呟いた。

「――ん。夕鈴、起きてー」
「…ん…」
ゆっくりと目を開けると、そこにはさっきまで自分を抱きしめていた黎翔の顔。
なぜか、その顔は下から自分を見上げている。
「…え? ええっ? 陛下?
あれ? ええっと…?」
「あれ? 覚えてない?
夕鈴、僕を膝枕してくれてたんだけど、
いつの間にか二人して寝ちゃったみたいなんだよねー」
そう言って夕鈴の髪を手で弄ぶ。
「そう、ですか…」

そっか、夢だったんだ。
夕鈴はそう心の中で呟いた。
借金を返し終えたのも、
バイトを辞めたのも、
陛下に結婚を申し込まれて頷いたのも。
全部夢だったのね。

ふうっと息をつくと、
お茶を飲みたいな、と黎翔が身を起こす。
慌てて夕鈴も立ちあがって、
お茶の準備を始めた。

そんな彼女の後姿を見つめながら、
黎翔が言った。
「そういえばさ、僕、夢を見たんだよね。
夕鈴が借金完済して、実家に帰っちゃう夢。
で、僕はそれが許せなくて、君を追いかけて行って、
求婚するっていう」
「え?」
思わず夕鈴の手が止まった。
それは彼女が見たのと寸分たがわぬ夢だったから。
その様子を見ながら、黎翔はにこにことつけ加えた。

「君が僕を一人にするのは抜きにして、
いつか正夢になるといいなー。
そうしたら、世界中のだれよりも幸せだから」

そんな彼の言葉に夕鈴は何も返せず、
顔を真っ赤にして立ちつくしていた。

【あとがき的なsomething】
ともこ様、いかがでしょうか。
バイト終了のお話ということでリクエストをいただいておりましたが、
公式ではまだバイトが終わっていないので、
夢オチという形になってしまいました。
切なめでもハッピーでもどちらでも可ということでしたが
せっかくなので両方盛り込ませていただきました。

つたない文章ですが、
よろしければお持ち帰りくださいませ。

他の皆さまも、ここまで読んでくださって
ありがとうございました。
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プロフィール
HN:
瑠璃
性別:
女性
自己紹介:
好きなことは散歩、読書、料理、ピアノ、そしてもちろん創作。
基本おっとりたまに毒舌。
お誕生日は、薄桜鬼の千鶴ちゃんやってる人と、AAAでラップ担当の人と、金色のコルダ(無印)でトランペットやってる人と同じです。
好きな動物は猫・犬
でも自分を動物に例えるとカメレオン。
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